Canada Youshinkan Kendo Dojo

軟弱に成ったものだ。

最近、熊と交信のある若い剣道家が言っていた。某指導者に掛かったら、其の指導者は迎え突きをする人で、攻めて入ろうとすると剣先を下げて、下から小突き上げる仕草をする。

わざと突き垂を外し、喉に直接剣先を当てる、意地の悪い迎え突きをする人だったらしい。

そこで、掛かり手は、其の剣先を下げた処に、片手突きを出したそうだ。そうすると其の元立ちは、上の先生に突くとは何事かと、其の掛かり手を叱ったと言うではないか。

そんな馬鹿な話があるか。熊が若い頃、恩師に言われて始めて元に立った。4段の時だった。其の時、 恩師の先生から、元立ちとしての心構えを聞かされた。

「元に立つと言うことは、相手からどんな攻撃を受けてでも、殺されても良いと言う位の気構えで立たなければ成らないと、教えられた。」

此れは後に、警視庁で主席を勤められた、小沼宏至先生にも同じことを言われた経験がある。

其れと熊が若い頃、渡辺敏夫範士に突いた事がある。まぐれで当ったのだが、先生にたいそう褒められて、先生の竹刀を頂いた経験がある。

又、10数年前に放映された、NHKの剣道紹介番組「120秒心の戦い」の中で、天下の持田範士に掛かり手が片手突きを出して、其の突きを範士は軽くいなされ、逆に突き返したシーンが放映された。

其のことを鑑みても、上の先生に突きを出すことを叱るような元立ちは、元に立つ資格が無いといってでも過言ではない。

勿論、お相手の元立ちが80歳を過ぎたご高齢の方であれば、それなりの配慮が居るかもしれないが、それでも本物の先生なら、80歳に成ろうとも、下から遠慮がちな稽古をされたら不本意であろうと思う。

元に立つ以上、掛かり手にどんどん突かせてやるくらいの、気構えがあって欲しいと思うのは、熊が間違っているのだろうか。

イヤ、そうでは在るまい、今行われている剣道が、剣道を離れておさわりゲームに成り果てた結果ではないか。剣道は本来厳しさを求め、其の厳しさに堪えて、其れに打ち勝つ精神力を養うのも一つの目的であるはず。

若し、ここを読まれている貴方が下の人から突かれるのが嫌なら、元に立つべきではないと思うのだが如何か。

実際、熊の道場では、突きを奨励している、若い連中が熊に対してガンガン突いて来る。勿論失礼な突きかたでなく、技としてちゃんとした、突きを出す。

熊は其れを褒めている。自分の師匠もそうであった。自ら体をさらして、突かせてくれた。だから自分もそうして指導をしている。

突きが剣道から無くなればもはや其れは剣道ではない。日本の剣道家も軟弱に成った物だ。勿論一部の方々だと思うが、情けない話だ。