Canada Youshinkan Kendo Dojo

矯正は一生の仕事。

昔、熊が七段を目指して全国を武者修行して回った時。朝稽古は大阪の清風高校で西範士、賀来範士に稽古をお願いをした。

その時偶然居合わせた、当時大阪府警主席の小林三留先生にもお稽古頂き、西先生の紹介で、朝稽古の後、大阪府警に連れて行って頂き、府警の午前中の稽古に出た事が有った。

小林師範との朝稽古は自分で言うのもなんだがそこそこ良い稽古が出来たと思っている。だから師範も府警に連れて行ってくれたのだと思う。

府警での10時からの稽古で小阪、有馬、小川、石塚、島野、等の先生方とお稽古頂き疲れが頂点に達していた。

夜行で、山梨から京都に着いたのは朝方の3.時、眠気覚ましに駅のホームで素振りをした。ベンチに座れば寝込んでしまいそうだった。始発の電車を待ち、大阪に出て清風高校に出向いた。

今でもあの駅のホームで素振りをしたとき回りに油煙の匂いが立ち込めていたのをはっきりと思い出す。息をすると空気が臭くて深呼吸が出来なかった。肺が汚れるような気がした。

今でも馬鹿げた無理な稽古をしていたと思うのだが、カナダからの受験、無い金をはたいて送り出してくれた家族。其の期待に答えなければ成らないと、当時は必死だった。

昼食の後、2時から、大阪府警の受験者たちで、模擬審査を遣るので、受けてみないかと言う事になり、府警の6段7段受験者と立ち会った。

結果は、疲れから、体が動かなくて、気迫も出ないし、散々なも物で有った。講評では、大阪弁と言うのは柔らかく聞こえるが、内容は痛烈なものであった。

「あんな~カナダはん、アンさん七段諦めたほうがエエデ、受けるだけ、金の無駄や、やめなはれ、やめなはれ」と言うものだった。

当然がっくり気落ちした。その時色々矯正点のアドバイスを頂き、課題が沢山出てきた。焦りに近い気持ちで打ちひしがれていた。

気落ちしたまま府警を後にしようとした時、小林師範が、玄関先で、
「熊さん、あんた稽古は出来ている。そやから、今から稽古を変えたらあかんで、そのままいきなはれ、そのまま、直すのは合格してからでエエ」と言うものだった。

其の一言で救われた。お陰で助かったと今でも感謝している。

恐らくその時、付け焼刃的にあれこれいじりだしたら、七段審査は失敗していたと思う。何しろ審査4日前のことだった。

剣道修行は、一日にして成らず、小銭の豚の貯金箱と同じなのだ。
少しずつ、つり銭を豚の貯金箱に放り込んでいるうちに知らず知らず溜まっている。

いきなり大きなお札をドンと入れようとしても、折りたたんで曲げても中々上手く入らないのだ。小銭が一番通りが良い。

だから、審査前にあれこれいじるのは、無理やり貯金を増やそうと、大きなお札を無理に豚の貯金箱に入れようとするのと同じなのだ。

つまり焦りと同じなのだ。そんなもの上手く身につかない。貯金箱に入らないに決まっている。

それより、今までの自分の稽古、其れを全て出し切るほうが、絶対審査員の心を打つ。

審査が近くなったら、あれこれいじるのではなく、自分の稽古を何時でも何処でも、出し切れるようにする稽古に徹底する事だ。其れがベストの方法だと今でも信じている。