昔、榊原正範士に言われた事がある。「基本の形を早く体に取り入れ、その基本の動き、打ち方を、稽古や実戦に使えるようにしなさい」と
実際、養心館でも毎回の稽古で、45分は最低でも基本打ちをする。特に面打ちに関しては時間を割いている。ところが、実際の稽古に成ると、その打ち込み稽古で練習している、打ち方そのまま打ちに出てくる人は、極少数だ。
熊の剣道仲間で、上手い事を言っている人が居る。
ゴルフの素振りは皆名人。だが目の前に球を置くと、皆凡人に成る。
又、剣道でも素振りは皆名人。だが面を着けて、相手の前に立つと皆可笑しくなる。と
これ等は全て、心の問題なのだと彼は説いている。確かに熊もそう思う。
熊の生徒たちも、基本打ちの稽古では皆それぞれ立派な打ち方で面を打つ。だが実際の稽古になれば、手と足がちぐはぐに成ったり、姿勢が崩れたりする。面白いなと思う。
熊は有り難い事に、27~8さにの若さで、榊原範士からその教えを受けたので、それが出きる様に、常々心してきた。だが、そんな打ち方が身に付いてきたと感じるのは極ここ数年のことなのだ。正確に言えば7~8年位前から、何と無くそれに近づいてきたカナと感じている。
14~5年の時間が必要だった事になる。ここを読んで頂いている、賢人の方々はそんな時間は必要では無いと思うが、それでも其れなりの心構えで取り組まなければ、中々身には付かないのでは、と思うのである。
稽古の中で、基本打ちの如く、面を打つ。姿勢を崩す事無く、胴、小手を打つ。
簡単に出きるようで、中々出来ない。と言う事は、正直、基本が身に付いていないと言うのと同じ事だと思う。
基本、されど基本、我々剣道家の課題はどれだけ基本通りに、稽古の中でお相手を打つことが出来るか。やはりこれも50年は掛かる仕事なのかもしれません。
長年お稽古されている方々が、六段審査、七段審査でご苦労されているのは、ここに、大きな秘密が隠されているのだと考えています。
基本通りの打ち方でお相手を打つことが出来て、審査が滑る筈がありません。
逆に考えれば、基本通りに打てて居ないから滑るのだと考えれば、答えはは自ずと見えてきます。
常日頃、普段のお稽古で基本通りにお相手を打つことを、心掛ける事が非常に大事だと確信しています。