Canada Youshinkan Kendo Dojo

剣先

剣先を効かせる、剣先が効いている、とよく言われるがどんな状態を言うのだろうか。

剣先つまり竹刀で言えば先革の先端である、だが、中には剣先は剣の先だから、先革のその先が効いていなければ成らないという人も居る。

また、恩師、榊原範士は丹田の力が左腕の裏筋を通り、左手小指から竹刀の弦を通り剣先に現れる力だとも教えられたこともある。

勿論、そんな力は肉眼では見えるはずも無い。だが昔、剣先から火が出る、白い輪が出る等と豪語した剣客も居た。

それらは何を語っているのだろうか、確かに、お相手頂く剣道家には色々なタイプの方々が居て、遣りづらく感ずる人が要る。

其の遣りづらく感じる方で、剣先が邪魔に感ずる方がたまに居る。剣先が何時も自分の水中線上に居て、打てば返され、無理に出れば突かれる。そんな方だ。

だが未だ未熟ゆえか、剣先から火も見たことが無いし、輪も見たことが無い。ただなんとなく遣りづらいな~くらいにしか感じない。

だが最近そう感じる方々が非常に減ってきた。打ち合うことが優先されて、数打ちの中でポイントに当ればそれでアピールをするタイプの剣道が増えてきたからだと思う。

昔の先生方の中には、本当に剣先に威力が有り、下手に打ち込むと殺されるかも?と本気で考えなければならない先生が居た。

確かまだ4~5段の頃、京都大会の朝稽古で誰も並んでいない先生が居られたので、喜んで掛からせていただいたら、初めから最後まで全て迎え突きで、三日間、ご飯が喉を通らない程のお稽古を頂いた先生が居た。

宿に帰って、富山の先生方に聞いたら、「馬鹿、掛かる先生を選べ」と言われた、聞いた話によると、其の先生は「ツキマス」と異名のある、突きで勇名をはせた先生であったらしい。それを皆知るから誰も前に立たなかったのだと解った。

だが、熊は馬鹿だから、次の日も其の先生に掛かった。それで、何本目かに、初めて先生の剣先が逸れる面が打てた。其のとき其の先生は面の中で「ニヤリ」と笑われて、竹刀を納められた。

其の先生の剣先の威力、恐怖感は未だに脳裏の底に張り付いている。其のほかにも、高校生の頃から、国士舘で大将を勤めた田舎のK先輩から毎回の稽古で気絶するくらいの突きを何本も頂いた。

おまけに県警機動隊の隊長をしていた、N先生からも、鎖骨を折る突きの稽古も頂いた。だから、今熊は突きは怖いとは思わない。

そんなことも関係しているのだろうか、剣先が効いていると感じる剣道家の方が少なくなったと感じている。

剣先が効く、これと、不動心を練る、これは、必ず一体化している修行なのだ。びくびく、反射神経で剣道をしている人で剣先が効いていると感じる人は皆無であることだけは事実のようだ。