現代剣道に突きと言う技が認められているにも拘らず、突きを毛嫌いする人が居る。
確かに突きは外れたら痛い。喉に大きなキスマークが付く。熊の若い頃はそれが勲章だった。だが最近はそうは行かないようだ。
だが、よくよく考えて頂きたい。剣道の発祥は殺し合いの技の研究から生まれた。それが昇華してきたのだから、竹刀ごときの痛さに腹を立てていては、本物の刀での闘争など、可笑しくて語れない。
それと、現代剣道で、突きを悪く言う人が居るが、剣道の文化を愚弄するのも甚だしいとすら考える。突きは確かに恐怖感が伴うが、それに打ち勝つ勇気を養ってこそ、剣道が剣道たる修行の目的があるのではなかろうか。
突きには、技としての仕掛けて突く突きと。相手の打突を制する意味での、俗に言う迎え突きとがある。
仕掛けの技の突きの交し方は、剣道形、3本目と4本面に既に教えられている。
三本目は、相手の刀をなやしながら、後ろに引いて間を取り即座に突き返す。突き返さなくても、間を取りナヤス遣り方で、防ぐことが可能だ。
四本目は、前に出て剣先を外す方法、突きは剣先で突く訳だから、其の剣先の中まで間を詰めれば突かれる事は無い。 要するに間に素早く入ることで、突かれる心配がなくなるわけだ。
では、迎え突きの場合は如何だろうか、熊の場合は迎え突きは殆ど遣らない、昔から言う「突っ張りは技の止まり」と言う教えを守っているからだ。
だが、剣道のお相手を頂く方々の中には、不動心の養う意味で、剣先を付けるお稽古をなされる方々も御出でだ。
だがそんな場合は、熊はこのように判断させていただいている。
迎え突きが、熊の胸に当るのが早いか、熊の面が届くのが早いか、熊の面がお相手に届くのが早い場合は、まったく意に介してはいません。何故ならお相手はもう既に死人です。死人が突ける筈が無い。
皆さんは針で指の先を突いた経験があるでしょうか、突いた瞬間どうなりますか。恐らく体中の筋肉が瞬間硬直するはずです。熊は仕事柄ナイフを持ちます。ですから昔、未熟な頃はよく手を切りました。
ナイフが指を掠めた瞬間飛び上がるくらいに反射神経で筋肉が瞬間硬直して、萎縮する経験を何度も体感しています。
これを実際の刀で体に傷付けられて、不動心(剣先を外さない行為)なぞ絶対に有り得ません。必ず筋肉硬直が体に走りますので、迎え突きなど真剣では出来ない相談なんです。
ですが、現代剣道では迎え突きは相手を制する方法として認められているわけですから、それを交す工夫が必要になるわけです。
どんな剣先の強い方でも、小手面を打たれて小手が確実に当って面に行った場合は、剣先が外れることが多いと感じます。
小手が当った瞬間に右腕に力が入るから剣先は少なからづ中心から外れますから、当らなくなるのだと思います。
それを考えると迎え突きをする人には、払い面、刷り込み面などが有効です。様は相手の剣先を中心から外して打つ工夫をすれば迎え突きは除けられます。
相手が突いてくれたらそれに対する自分の工夫でそれを乗り越える。それが修行だと思いますし、自分の実力を伸ばす好機ではないのでしょうか。
突きをもっと自分の中で容認することで一段と強い剣道になれる筈です。