Canada Youshinkan Kendo Dojo

「何故黒」

剣道の防具、最近は色とりどりで、非常にあでやかになった。
熊が剣道を始めた昭和30年頃は、子供は竹網胴、中学で生地胴、高校で黒塗り胴、が殆ど、県下に一人二人、大先生で金梨地胴、精精其れくらいだった気がする。

其れが、昭和も景気が良くなり、段々変わり胴が流行りだした。熊もご多分に漏れづ、
色々の飾り胴をつけた事がある、特に石目に凝り。三種類の石目を付けた。

処が、カナダに来て、その石目がボロボロにはげだして、見るも無残な姿になり、
結局は黒塗り胴に成り、おまけに胸飾りまでできるだけ黒の近いものに成りだした。

それには親爺のアドバイスも大きな切欠に成ったのだが、親爺が言うには、「黒が一番お洒落」なのだと言う。その背景に、もう一つ大事な事が隠されていた。

人間、誰でも人に良く見せたいと言う見栄の感情、其れは普通で当たり前の感情だ。
だが、剣道で良い格好をしたい、よく見せたい、勝ちたい、は我欲に繋がる。だから、出きるだけそんな邪心を招きやすい物は身に着けないほうが無難だ。と言う訳である。

確かに、大先生方の中に黒胴が多いことは事実だ。地元や、ご自身の道場で変わり胴をつけておられるところは目にする事が多いが、京都の晴れ舞台や、大会用のお道具は、黒が多い。

京都で八段の立会いを見て、鮫胴が7~8%。変わり胴それも地味な色合い2~3%%、黒塗り胴が90%以上を占める。其れは何故なのだろうか。八段審査でも合格する人の殆どが黒塗り胴の人が多い。これも何故。

審査委員の中に、若し、黒塗り同意外は合格させないと言う不文律があるのなら別だが、そんな話は聞いた事が無い。だが間違いなく、般若や派手な絵模様のお道具の方が、合格されたのを見た事が無い。(熊が知らないだけかもしれませんが)

熊の友人で、毎年アメリカから八段を受験している人が居る、その彼も気が着いたと言った。合格するのは黒胴だけ、黒の方が精悍に見える、と彼は言った。
精悍に見える其れは事実のようだ。熊もそう思う。

八段の京都の立会いでも、黒が圧倒的に多いのは何か隠れた秘密があるのかも知れない。とにかく黒はシンプルで、落ち着きがあり、一番無難である事は事実。
熊も今一番黒いお道具が好きだ。飾らない方が剣道そのものに集中できる。