剣道で、一番厄介なのは、自分自身の心のコントロ-ル、制御である。
身に着く技術というのは熟練すればするほど、手際よく要領よくこなせるようになる。
動きに無駄が無くなり、完単そうに仕事が進んで行く。
素人から見れば、結構難しい仕事でも、いとも簡単に見えるはずだ。
剣道での打突動作、基本打ちとは、一番簡単に打てる方法を教えているに他ならない。
単純に理解できる事で、切り替えし、左右面を一呼吸で9本打てる。
だが、相手と対戦中に、一息で9本立て続けに打てるだろうか??
恐らく打てる人はホンの一握りの人でしかあるまい。
普通の切り返しの9本より、実戦での一息9本は難しいはずだ。
それは何故か?
相手が反撃してくるからであり、ただ打つ事のみに専念できないからだと思う。
間合いがあり、相手との精神的遣り取りや、動きの変化で、必要以上の神経を使う。
其れが邪魔していて、簡単に打てる動作も簡単に出来なくしてしまうのだ。
これを超越できて初めて、単純で簡単な打突動作が身に着く。
そう考えると、簡単に単純に打つことほど、難しいものは無い。
相手が居ても、相手に左右されない自分、自分自身の中に芽生える、打ちたい病、打たれたくない病。
心の焦りが、全ての感覚を狂わせてしまう。
間合い然り、集中力然り、筋肉まで不自由に成る。
我々道を学ぶものは単純で尚且つ簡単に打てる方法を目指そうではないか。
其れが出来るようになれば、名人と呼ばれるに違いない。