機は大事のものなり、気を機と云う。この機は心善悪二道無きなり。
戸より外え出れば二道となる。
この機を能く見付くべし、鈍成るものには、この機見えざるなり 。
犬はよく人の機を知るものなり。
犬を恐るる機あらば、犬必ず嚇す。恐れざるざる人を知らぬ振りして通すなり。
又、打つか追うかする機在れば立ち退くなり。
人として、この機を知らざる者愚の至りなり。
又、万事に通ずる人の機は少しも知れぬものなり、是を名人の位という。
剣術に於いても達人の機は更に知れざるが故に、知らず知らずして十分に負くるなり、
考うべし。