此処、熊のつぶやきは、熊自体が感じた事を何となくだべって居るのだが、剣道は簡単だ、と思えることも有れば、ある一点を、見ていくと、非常に難しい。
まあ、剣道は、簡単と書くと、慢心にも受け取られかねないので、書くのを躊躇われるのだが、5段以下の生徒達と稽古していて、彼等にもっと工夫が欲しいと毎回、感じる事がある。
余りにも簡単に使われすぎる。自分の師匠との稽古だから、飲まれるのかわ解らないが、もっと、此方を苛める位の稽古をして欲しいと思うのである。単に汗を掻くだけでは面白くない。
だが、熊の手元で育った6段二人は、少々てこずる。特に白は厄介この上ない。昔、堀口清範士九段が言われた言葉で今更ながら、思い出される言葉がある。
「目標に追いつくのは意外と簡単だが、追い越されないようにするには骨が折れますよ」と言う物だ。強さの持続、加齢と共に更に強くなることの難しさ。
特に、年とともに体力が落ちる。持田盛治範士十段の遺訓の中に。60を超えたら体が弱ると言われていたが、確かに筋力、体力は落ちてくる、体当たりも以前よりは強く受けられなくなってきている。
返せたはずの技が返せなくなるのだ。確かに要領は、年の分だけ、其れなりには成るが、其れが段々通じなくなるのだ、下が伸びてくるからだ。
今、自分で育てた6段二人に、追い越されないための努力をして居るが、骨が折れる。
体力の減衰と共に無理な稽古も段々出来なくなり、ややもすると現状維持に甘んじなければ成らないかと、しばしば、弱い心が頭をもたげる。
剣道はよくよく、繰り返しなのだな~と思う。昔の先生方が経験して来られた尊い教えを、出来るだけ早くから知る事が大事だと思う。そして実践する事だ。
36前に聞いた言葉、自分なりに頑張って稽古して来た積りだが、此処に来て、追い越されない努力がどれほど困難な物なのか、見につまされている。
剣道は簡単な様で、堀下げれば難しい。その堀下げをどの時点で止まるのか、満足して止めたら、必ず追い抜かれてしまう。
とんでもない、井戸掘りに挑戦しているような物だ、体力の減衰と共に作業能率も落ちだす。36年前、何気なく聞いていた言葉がこんなにも重きがあるとは当時知る由も無かった。