前回は身構えの中の足について、横幅、縦幅、方向について考えを述べた。
今回は、足の踏まえ方について言及したい。
幼少年指導要領の中では足の位置と題して、
10「両足のつま先は前方を向き、左右の開きは約一握りとする。」
11「両足の前後の開きは、右足の踵の線に沿って左足のつま先を置くようにする。
左足の踵を僅かに浮かせて、体重を等しくかける。」
12「両膝は曲げず伸ばさずの状態に自然に保つようにさせる。」と書かれているが、
昔から、前足踵は紙一枚浮かせて(指導要領には書かれていない)との教えがある。
この前足踵が、紙一枚浮かせているか、いないか、非常に大事なポイントになる。
前足踵が床に付いている場合、先ず咄嗟の動きには対処できない。
100m競争を考えていただきたい、踵が着地した状態で早く走れるであろうか。
素早い走りに似た動きの中では絶対に踵は浮いた状態が多いはずである。
素早い体捌き、素早い打突をしようと思うのでれば、前足踵は必ず浮かせておく必要がある。
「左足の踵は僅かに浮かせて」と書いてはあるが、この僅かに浮かすが、どの程度なのか。上がり過ぎていたのでは、ヒカガミ(膝の後ろ側)が曲がり腰に力が入らなくなる。下がりすぎて、後ろ踵が床に付いているようでは、居付きに繋がる。
よく試合の写真を見て感じることだが、追い込まれて面を打たれている場合、後ろに除け反り、後ろ足の踵が着地している場合が殆どだ。後ろ足の踵が着地する事は剣道では命取りのに成ると考えている。
それに一番大事な、蹴り出しに繋がる、一番力の出る角度はどの程度なのか知る必要がある。熊の個人的考えでは、指二本程度、2cm~3cmが一番妥当な所では無いかなと考えている。
上がりすぎている場合、必ず一度膝を曲げて、しゃくるように出てくる場合が多い。
その場合は、必ず打突のタイミングがしゃくる分遅れを取るはずだ。
踵の上がりすぎは、ダイレクトに蹴り出しに繋げる事が難しくなるからだ。
踵が下がりすぎていて床に付いている場合は咄嗟な打突はできない。
何時でも足裏に力を溜めて、打ちに出れる為には、2~3cmが一番出やすいと考える。
バスケヤ、バレーの(レディスポジション)準備した態勢は踵を浮かせて体が前屈み担っている。これは運動神経、反射神経の動きだけで行動する場合はそれが一番良いのであろうが、剣道では、腰、腹に力が溜まっていなければ成らない。
でなければ、体当たりや、強い打突に繋げる事が出来ないし、安定した姿勢が確保できないで、正しい姿勢が確保できていなければ正しい打突は絶対に出来ない。
その為には、左足を軽く伸ばし、腰を張り、腰を安定させて、下腹部に力が溜まる状態を維持する事が必要がある。左ひざの伸ばし過ぎは体が硬くなる元だが、緩みすぎている場合は腹の力、丹田の力が入らないはずだ。だから左ひざは軽く伸ばす必要があると考えている。
その状態が維持できて、初めて、ダイレクトに蹴り出す力に繋げる事が容易になって来ると感じている。
羽賀の親爺は足捌き体捌きの天才だと熊は感じている、まるで、ダンスでも踊っているが如き動きの中で、翻弄されてしまう事が多い。親爺の足捌きは熊の財産になっている。
この足捌き、体捌きがこの足の踏まえ方から来ている、又そのように教えを受けた。
昔、八段審査で、足だけしか見ない審査員が居たと読み物で読んだ覚えがある。
高々2~30年前の話である。熊は剣道は足だと思う。
剣道は竹刀を振リ打突、技を繰り出すので、どうしても、腕のほうに気持ちが行くと思うが、本当に強くなりたければ足を疎かにしない事だと強く確信している。
正しい足の踏まえ方、それが正しい打突に繋がり、全ての正しい技、姿勢にも繋がると思う。ゆめゆめ、足は疎かに成されませぬように。