Canada Youshinkan Kendo Dojo

「心構え、気構え、腹構え」

前回まで、身構えについて、熊の未熟な考えを披露してきた。
しかし、この教えは決して荒唐無稽の物ではない、熊が今まで先生方から教わり、実戦してきて、身に着けてきた事柄です。参考に出切る人は参考にしてください。

さて、身構えの次は精神的な部分に入らなければ成りません。心構え、気構え、腹構え
これは熊とてまだまだ、未熟で研究途上である事を先に申し上げておきます。

先ず心構えですが、心構えは自分の考えの中で、「よし、遣ろう」と言う決意です。
処が人間の心程あやふやな物はありません。皆さんはどうか知りませんが、熊の場合意志が薄弱な物ですから、何度も何度も心変わりしますし、心裏腹と言う所です。

初心貫徹と言う有言葉もありますが、熊の場合、正月に年頭計画を立てて、3日後には忘れている。と言う事が沢山あります。心構えの段階は本当にあやふやな物です。

毎日一人稽古をする、と心に決めてでも、中々毎日続ける事が難しい。
ナンダ、カンダ、出来なかった理由をこじつけている自分を見たことがありませんか。
それが心構え、一時的な物だと解釈しています。

禅のお坊さんですら、「心こそ心迷わす心なり、心に心心許すな」と言う位ですから、心とはそれ程当てに成らない。それは自分の観念で考えているからです。

処が、段々稽古の回数が増えてきて、上手くなる楽しさが増えてくると、一々自分の心に言い聞かせなくても、色々工夫をして、益々上達を望み稽古に熱が入るようになって来ます。心で考えている訳ではありませんが、気持ちがそうさせて行くのです。

つまり、心構えの段階では、観念的に自分で考えていますが、気構えの段階では自分で何かを感じる段階、だと言う事が出切ると思います。

気とは大宇宙のエネルギーです。目には見ないけど偉大な物を動かす力がある。
空気=流れれば風。電気、蒸気、冷気、霊気、全て物を動かす力があります。
命の根源も其処にあるとまで言われています。

つまり気構えは宇宙の力を自分に取り入れて、溌剌と元気良く、楽しく出来て、自分でやろうとしなくても、自然に出切るように成る段階だと言う事が出来ます。
本能が司る段階と言えば良いでしょうか。其処には最早遣る遣らないの迷いがありません。ですから、無意識に、無心にできる段階もこの段階だと感じています。

処が、幾ら無心、無意識の状態でも、感じれば感じるほど、五感、六感が指令を出すので、その現象に反応してしまう。だから、咄嗟に打てる。つまり反射神経 そのものが気から発動されているからです。と言う事は、驚いた時ハッとするのも五感で感じるからなのだと言う事にも成る訳です。気の発動により驚くと言う 事に成ります。

それでは、本当の物の役には立ちません。もの有る毎にびくびくしていては、物事を成就させる事が難しい。そこで、その又一つ上を行くところを人為的に作り上げなければ成らない。それが腹構えです。腹構えは何もしないで身につくものではありません。

長呼気丹田呼吸、真理瞑想業により、自意識の改革をし、何物にも犯されない、不動の大全自若とした境地を作り上げなければ成らない。これが腹構えなのです。

これに向かっての修行が剣道通じての眼目なのでは無いでしょうか。木鶏しかり。

面白い話があります。

世界大戦で、敵艦に此方の砲弾が命中して、その艦船の撃沈の様子を見ていた海軍総帥が、自分の乗っていた戦艦に敵の砲弾が命中して、物凄い音がした。
その時、その総帥は、その音につられて、そちらの方を見た。その間に敵艦が沈んでしまった。その総帥は悔やんだそうです。自分はまだ腹構えが完全に出来ていないと。

又、ある人は、人助けの為に、相手が射撃してくる中を堂々と、歩いて行ったと言う話もあります。

昔の人は、そんな腹構えの出来た人物が沢山居た。我々も心したい物だと思います。