Canada Youshinkan Kendo Dojo

不器用

世の中には本当に不器用な人が居る。処が、この不器用な人ほど、人間的には真面目で、良い人が多い。これがまた不思議なのだが、最近であった剣道愛好家も、非常に不器用な方だった。

その人は体も大きく、力もあり、その力を利用して、力任せに、竹刀を振るので打たれた方は溜まった物ではない。おまけに、不器用だからか、防具外れを良く打たれる。今回、初めてお稽古いただいたのだが、高々二~三分の稽古で二度も、防具外れを打たれた。

よほど遺恨でも有るのか、と勘ぐりたくなる位に強いうち方だった。

通常自分の道場で、そのような打ち方をされたら、目には目を、歯には歯を、と言うことでこちらも遠慮会釈なしにガチンコ遣るのだが、いかんせん、その日の稽古は他道場で交歓稽古の場だったので、小手を1本打ち、早々にお引取り願った。

処が、稽古後の懇親会で、話をしてみれば、気は優しくて力持ち、と言えば良いのか、本人ほとほと恐縮されていた。人間的には本当に好感の持てる方だった。

だが、現代剣道は、お互い体を叩かせていただきながら、己の未熟を発見し、それを克服し、自己向上の糧として、修行していくからには、お互いの思いやりが無くては、稽古にはならない。

気の毒だがこの方は稽古相手に嫌われるであろう事は容易に推察できる。せっかく剣道が好きで、お稽古されているのであろうから、その辺を、稽古のあり方、学び方として、幾分強く言わせていただいた。

その方は、真面目すぎるくらいに真面目で、思い込みも激しいのかもしれないが、剣道を通じて、人間的にも幅が出来、魅力ある剣道家に育って頂きたいと心底願った。

これも、交剣知愛の一遍なのかもしれない。