嫌な話を聞いた。剣道一筋にまい進していた高校生が、インターハイ地区予選に勝ち、全国大会を目の前にしながら、調子を崩した為に、レギューラーから外されて、不登校に成ってしまった。
其のためにインターハイ全国大会もドタキャン、引きこもりに成り、学校も不登校になり、おまけに其の子は、昨日、自ら若い命を絶ってしまった。何とも遣り切れない話である。
試合中心の剣道が生んだ悲劇である事は間違いがない。今や高校剣道界、イヤ、少年剣道界も子供たちは単に勝つための道具でしかない。其処には教育的見地は無いのに等しい。
若い、将来有る有望な子供をたかが剣道で、死に追いやる。本来、自己防衛が元で剣の技が発達して、自己の精神強化にまで昇華してきた剣道のはず。
身を守るための剣道が自らの命を絶つ。何かが狂っているとは日本の指導者たちは気つかないのか。
其れは全剣連においてですら、先頃の世界大会の不覚を、全剣連会長自らが「不甲斐ない」と吐き捨てたことを見ても分かる。
子供や選手に対する愛情がないのだ、日本の社会全体が何時の頃からか変わってしまった。昔はどんな会社でも従業員社宅があり、会社が従業員をまもって来た。だから社員も一生懸命に働いてきた。
戦後の、どん底から皆力をあわせて、世界有数の国に迄成長してきたが、現在、どこかに何かを忘れたかのごとく、不景気になれば、先ず第一に従業員が首を切られる世の中に変容してしまった。
ばかげた話、会社を運営する経営者たちは首切りがない。本来なら会社を窮地に追い込んだ、経営者の彼らこそ責任を取るべきなのだ。所が、従業員の弱い人間たちは、ゴミ同様、錆びた道具扱いで、いつでも捨てられる。
子供の頃、何故か、「牛尾に成るよりも、鶏頭に成れ」と言う言葉が好きだった。母親も父親も良くこの言葉を口にして意味を教えてくれた。だから今、小さいながらも自営で何とか食いつないでいる。
父親が、100人ほど雇用する、自営だったから、末っ子に生まれたにも拘らず、自分も会社勤めは端から考えていなかった。父は従業員を本当に大事にしていた。其の記憶が鮮明に有る。
今考えれば幸か不幸か、今までの人生、自分で何とか自分を守ってきた。今僅かだが、従業員を抱える身と成ったが、よほど悪いことでもしない限り、首切りする考えは無い。又そんな悪い事をするような、従業員も居ない。
此方も誠心誠意、彼らと向き合っている積りだ。だから、彼等も自分たちが守られて居ることを確信している。他社で働いた経験が有ればあるほど其の思いは強いようである。
其の声が従業員達から聞けた。嬉しい事だと思うし、彼らに対する責任の重さも実感している。愛情の無い人間が増えて、自分だけが良ければいいという指導者、経営者が増えてきた。
そんな人間たちばかり上に立てば社会は必ず崩壊する。
今、63歳を超えて、カナダに住んで丁度30年の月日が過ぎたが、親の教育にに此れほど感謝したことは無い。今からの子育て、他人に頼るのではなく、自分で歩ける教育をするほうが子供の命、生活をを守ることが出来るのではないだろうか。そんな気がする。