第四に心掛けているのは、技術面での話しになる。
簡単に言えば中心を割ると言う事、其の中で熊が考える中心とは、中心の一点だということではない、相手の中心線と考えた方が良い、相手の目鼻口喉~臍に掛けての線である。
熊が良く生徒に説く話で、舟の舳先に例えて言う事がある。舟の舳先は水を分けて前に進む、あの舳先の角度が左右対称でなければ舟の進行方向が真っ直ぐに進まないはずだ。
だから其の舳先が水を分けて進むのと同じに自分の打突も相手の中心線を割っていく。
お互いの中心線は唯一つであるから、其処を完全に割っていけば相手の舳先は方向を変えざるを得ない、つまり相手は真っ直ぐに打てないことに成る。
だから徹底的に、中心を割って面に出る事を心掛けている。
ただここで、一つ考えておかなければ成らないことがある。相手の中心と言えども時と場合により、自分の打突の角度が変わると言う事、話は矛盾して聞こえる かもしれないが、攻めの攻防の中で、一瞬を捉えて打突する訳だから、時には裏から、表から上から下から、出る事がある。それもまた真なりである。だからこ のように考えてみていただくと解りやすいかと思う。
円を書いていただいて、其の中心点にお相手が居る、其処を自分は中心点を通り180度を結ぶ線を打突きして行くと考えてもらえば良いのではなかろうか・・・・
円は360度、何処からでも打ち込める、ただ其の打ち込みはどの角度からであろうとも、円の中心に立つ相手の中心線を通る、180度の方向へ一直線に出て行くということと考えて頂ければ良い。
中々難しい事ではあるが、それを心して遣るのと遣らないのとでは、雲泥の差が生まれてくる事は必定だ。
昔、こんな笑い話が合った。日本から団体で見えた剣道のグループがあった。其の会食の席で、日本側から来られた剣客の方々が、ゴルフと剣道の話に、花が咲 いた。其の中で彼ら曰く、「剣道は人の頭を叩くからまだ簡単だ、ゴルフボールは小さいから打つのは大変だ」と言われたとの事。
それを20才そこそこの白熊が聞いていて、思ったそうである。
この方々は剣道を解っていない。自分は其の大きな人間の頭の中心1mmを狙って稽古をしている。刀の刃は1mmも無いよ。確かに、頭も大きい、竹刀も太い、だけど狙うのは頭の中心1mmだよ、ゴルフよりは高度だと思うけどな。と言うのが彼の意見だった。
中心を取る、其処は1mmの世界の追求だと思っていただければ良い。